- IMD Business School

私のIMD留学体験(第3回)
〜 EMBA /吉田道央
(NTTデータ)

スイスのIMDでMBAやEMBA(Executive MBA)を取得した人々が、その体験談を語るシリーズの第3回。今回は、NTTデータでサステナビリティ・コンサルティングに従事する吉田道央さんをご紹介する。

IMD EMBA  - IMD Business School
留学初日の模様

 

NTTデータでシステム開発とコンサルティングに携わってきた吉田道央さんがIMDのEMBAコースで学んだのは、2020年から2021年にかけてのことだった。

EMBAを選択した理由は主に2つ。1つは、企業がインパクト投資やESG投資にどう取り組むべきか学ぶこと。もう1つは、グローバルな環境で発揮できるリーダーシップを身に付けるためだった。

システムインテグレーターであるNTTデータは長年、銀行の勘定系システムやクレジットカードの決済基盤といった大規模開発を行ってきた。だが、こうしたシステム関連の大規模事業は将来的に減少が見込まれる。企業としては必然的に新たな事業を見出さねばならない。そこで彼が興味を持ったのが、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)やインパクト投資だった。

社会や環境に測定可能な好影響を与えつつ、ビジネスとしても成立させていくインパクト投資。だが、分野の異なる日常業務に追われていたのでは、なかなか知識や情報は習得し難い。彼は、「きちんと正面から向き合って勉強したい」と考えた。

EMBAのプログラムでは、「実際に投資家を招き、彼らから生の声が聞けたことがとても印象的でした」。ケーススタディでは具体的な企業を取り上げ、そのマテリアリティ(重要課題)やSSP(共通社会経済経路)を考察、投資の是非を議論する。例えば楽器製造会社であれば、楽器に使う木材の調達が環境にどのような負荷を与えているか、といった視点で企業のインパクトを可視化する。

「財務情報だけでなく、非財務情報も見定めて、社会にどうポジティブなインパクトを残せるかを考える。金融関係の人々にとっては当然のプロセスなのでしょうが、畑の違う私にとっては非常に新鮮でした」

意外だったのは、環境団体などのアクティビストもプログラムに招聘されたこと。「ニュースなどで見る限り、アクティビストは過激な思想を持った人々というイメージだった」が、実際は思ったよりずっとマイルド。「20歳くらいのとても若い人たちが、世界の未来に向けた提言などをする。その姿には驚きました(笑)」

IMD EMBA - IMD Business School
クラスメートたちと

 

吉田さんは入社以来、2度の海外赴任を経験していた。インドとドイツにそれぞれ数カ月滞在、システム開発やオムニチャネル・プラットフォームの構築などに尽力した。

「国際的なビジネス環境に飛び込んで、当時はおっかなびっくり対処していたような気がします。試行錯誤しながら周囲とコミュニケーションを取っていましたが、どこまで自分の意思が伝わっているか確信が持てなかった。それで、将来はグローバルな環境でも強いリーダーシップを、と考えるようになりました」

EMBAのクラスで同期になったのは、50人弱。彼らの国籍は世界26カ国に及んだ。「同じ欧州の国々でも、議論の進め方や国民性は全く異なる。例えばスカンジナビアの人たちは南欧の人に比べて、ものの言い方がとてもストレートでした。でもそれは、彼らがディスカッションに対して真摯に向き合っていることの表れ。それぞれの違いをきちんと把握すれば、どの国の人にでも対応できるようになる。多様性が担保された環境で学び、切磋琢磨したことが自信につながりました」

「それでも、一緒に働く人たちの文化的相違点は表面上のことに過ぎない。目的の確認や課題の整理といった本質的な作業は、日本で培ったやり方が十分に通用しました。特に弊社では大規模なシステム開発やプロジェクトマネジメントに携わってきたので、自分にはそれなりの経験があった。文化は変わってもスキルは普遍的であることが確認でき、その面でも大きな自信を得ました」

同期生には、女性も多数いた。中には出産のためにプログラムの途中で休みを取る人、4人の子がありながら家族のサポートを得、休まず通い続ける人など様々な参加者がいた。「日本なら、妊婦の方であれば出産を終えて、少し落ち着いてから留学しよう……と考えると思うんですが、クラスメートだった女性たちは実に前向きというか、自分の人生に遠慮していないというか。自分のやりたいことは一切後回しせず、すぐに実行する。とても印象的でした」

3年前からは、NTTデータの新規事業であるサステナビリティ・コンサルティングでマネージャーを務める。主力サービスは、2022年9月から提供を始めたスコープ1〜3(製品の原材料調達から製造、販売、消費、廃棄に至るまでの過程で排出される温室効果ガスの量)算定を実現する温室効果ガス排出量可視化ソリューション「C-Turtle®︎(シータートル)」だ。現在は国内企業向けに展開しているが、将来的には海外市場への進出を図る。

「運よく、自分が興味を持っている分野の新規事業の立ち上げに関わることができた。今後海外で展開していく際には、IMDで学んだリーダーシップが必ず生きてくると思っています」

 - IMD Business School
コロナ禍 スイスへの移動 乗客は吉田さん1人だった

 

吉田道央 プロフィール

1984年、東京生まれ。一橋大学商学部卒業後、NTTデータに入社。ITディレクター、ITコンサルタント / プロジェクトマネージャーなどを経て、2021年からサステナビリティ・コンサルタント / マネージャー。2020年〜21年、IMDのEMBAコースで学ぶ。