IMD世界競争力センター(IMD World Competitiveness Center、所長 アルトゥーロ・ブリスIMD教授)は11月14日、2024年度版「IMD世界デジタル競争力ランキング」を発表しました。このランキングは世界67の国・地域を対象に、ビジネスや行政プロセス、社会変革につながるデジタル技術の導入・活用状況を国・地域ごとに測定し、比較するものです。
1位に輝いたのはシンガポール。次いでスイス、デンマーク、米国が続きました。トップ10には東アジアの3カ国・地域(韓国・香港・台湾)と北欧の3カ国(デンマーク・スウェーデン・ノルウェー)がランクインしました。
日本は前年の調査からランクを1ポイント上げ、31位に。「技術的枠組み」「高等教育における水準」が評価される一方、「ビジネスの俊敏性(アジリティ)」「上級管理職の国際経験」「デジタル/技術的スキル」は最下位の67位。「将来への準備」に課題が集中していることが明らかになりました。同センターのアナリスト、ホセ・カバジェロ、ウィリアム・ミルナー両氏は「創造的思考や型破りな考え方といった、起業家精神の基盤を教育の場で養うことが日本のビジネスアジリティ向上につながるのでは」と述べます。
また高津尚志・IMD北東アジア代表は、「この数年続いた順位の下落傾向に歯止めがかかったことは歓迎すべき。ただ一方で、日本の課題と機会の構造が『知識』『技術』『将来』といった因子レベルにとどまらず、その下に紐付くサブ因子レベルで変わっていない点に注視すべきです」と述べます。
「『ビジネスの俊敏性』(58位)や『人材』(53位)など、本来は経営幹部のイニシアティブや産官学の連携で改善できるはずのサブ因子の弱さが長年変わっていない。特に、強みだった『技術的枠組み』(6位)、『IT統合』(17位)といった優位性を具体的成果につなげられなかったこと、同じくこれまでトップ20内だった『科学的集積』が15位から24位に後退したことは憂慮すべき点です。
また、日本はどの因子でも中位以下にとどまっている。とりわけ、経営幹部の自己評価をベースとした指標で順位が極めて低く、DX推進に向けた自信の欠如がうかがわれます。リーダー層がより積極的な姿勢を体現し、具体的成果を生み出し、社会全体の希望につなげていく −− そうした努力がこれまで以上に期待されます。
デジタル技術をビジネス・行政・社会変革の重要な推進力として活用するには、産官学の対話や協働の推進も必要。データ分析、それに基づく議論を通じ、具体的な方針・施策を立て、実行に移していく勇気と行動が今こそ求められています」